シリーズ「書の周辺部」です。書に纏わる周辺部の話が出来ればと存じます。カテゴリ「書の周辺部」で纏めてありますのでご興味がありましたら御覧ください。
日本では人口低下に加え、書をやる人そのものが減っていると実感します。なので、少しでも「筆を握ってみようかな」と思う方のハードルが下がればと思い拙いながらも投稿させていただきます。
今回は、「書をある程度経験されている方」に向けての発信となりますので接頭語に「経験者」と付けさせていただきました。
「筆を毎日、簡単に洗うには」
「筆は毎日洗ったほうがいいのでしょうか?」
そうした質問はよくあります。
その質問は「歯は毎日磨いた方がいいのでしょうか?」を想起させますが、
人によって実は色々と考え方があるようです。
私は多年に渡り書に携わった結果
「毎日洗ったほうがいい」
と実感した方です。
毛の状態が明らかに違うんですよね。
長持ちしますし。
ですが、
面倒くさいですよね。(;´Д`)
洗面台は汚れるし手は汚れるし下手すると服も汚れ水道管も真っ黒になるけど大丈夫なんだろうかとかね。とにかく面倒くさい!! この洗うのが面倒でブルーになる筆洗いシンドロームが存在・・・はしないのですが、私等は「洗うのか・・・」と思っただけで少しブルーになります。(笑)洗面台も洗わないといけないので。付随する作業が多すぎる。
筆を毎日洗う方法
私はこの方法をやりだしてから10年以上たちますが、以前よりも書くにようになりました。(笑)何せ、筆を洗い、良好な状態を保ちながら、墨を一切無駄にせず、そればかりか水も無駄にせず、手間もかからず、挙げ句に汚さないし、掃除もしないでいいからです。
まず、鍋の素の空き瓶を用意します。
私はこの瓶を色々と使っているのですが、この写真の瓶等はシリカゲルを入れているじゃないですか。普段は黒豆をいれているものですからw 今回シリカゲルはいりません。
使い切って、洗って数日、複数本あれば1ヶ月ぐらい陰干ししていると、まあまあ匂いが抜けます。私のはキムチの瓶なので匂いはなかなか抜けませんが、ちゃんと洗っていれば問題ありません。
蓋は捨てないで下さい。
乾燥させる際はこのように蓋を開けて放置します。
輪ゴムを1つ用意します。
ネギに使われているような小さな輪ゴムが丁度いいのですが、一般的な輪ゴムでも何ら問題ありません。
蓋に通します。
テロンとしてますが、これで以上です。
そしてこの瓶に 水 を入れます。
窪みがあるじゃないですか、最初はあの辺りまで入れます。
写真のシリカゲルは不要ですよ。
この瓶で筆を洗うのです。
筆を瓶の口にもっていき、輪ゴムを引っ張り筆を通します。
この状態で筆を瓶に浸し、
筆を2,3度動かし墨を洗い流します。
実はこれだけで終了です。
冒頭で歯磨きを例えに出しましたが、筆も指で毎日きっちりもみ洗いしたりすると毛も筆の纏まりもダメージを受けるのでオススメ出来ません。歯もそうですよね。力を入れるなと言いますが、あまり力を入れすぎず、入れなさすぎず、的確にキッチリ磨くことが大切なのに近いのです。
(;´Д`) 洗った筆を拭く際に汚れるんだよね~
その必要はありません。
実はこのまま数日なら放置出来るんです。
そのために輪ゴムを通しました。
このまま筆管を倒し
輪ゴムに引っ掛ける感じで寄りかからせます。
すると輪ゴムがストッパー代わりになり、
筆が瓶の中に落ちません。
輪ゴムが無いと、引っ掛かったようで瓶の中に水没していたりします。筆管を水没させるのは100害あって1利なしなのでご注意下さい。筆管が痛むし、筆先は痛むし。
(重要)出来れば筆の先端1/3程度が水に触れている程度が個人的には理想ですが、必ずしも浸しておく必要はありません。また、この状態で3日以上は放置しないで下さい。春~秋にかけては根本や筆管がカビます!! また、毛を全部水に浸すことは絶対にしないで下さい。下手すると抜け毛が激しくなったり毛がバラバラになり、筆の寿命が短くなります。
3日以上放置したい場合
何故、水に少し浸すのが理想かと言うと、翌日書く際に筆が瑞々しい状態で書けるからです。もし、3日以上書く予定が無い場合は、紙で拭き取らなくてもいいので、筆たてに立てておいて下さい。
洗った状態でなら筆立てが便利。1周間程度過ぎて筆が乾燥していたとしても墨がほとんど残っていないので、カチカチにならず済みます。使う際に墨に浸し、ならせば復活してくれます。
いよいよ本格的に放置する場合は、筆立てから筆置に移動させて下さい。筆立ては何気に毛の端部にダメージがあるので、毛がダメージを受けないように、横にして下さい。洗ってあるので、問題ありません。
この方法は他にもメリットがあります。
水さしになる
「硯に水が減ったらこの瓶から足せばいい」
この方法だと「流す必要がそもそもない」のです。何故なら硯に水を足す際に、ココから足せばいいのです。一切の無駄が無い。瓶の水位が減ったら、この瓶に水を足せばいいので水さしもいらない。
一石二鳥どころか、三鳥、四鳥なのがこのやり方です。なお、瓶がないからペットボトルでいいねと思われた方。500mlとか使うじゃないですか、ぶっちゃけ倒れやすいです!! 350mlならと思うじゃないですか・・・不安定です!! しかもちょっと太めの筆だと口を通りません。
こうしたものは多少なりとも重量があったほうが安定するのでガラス瓶である鍋の素を使うわけですね。また、このタイプ瓶は他にもメリットがあり、蓋の密閉性が高いので長期間使わない際に蓋をしめておいて下さい。倒れても当然漏れませんし、蓋を無くす心配もありません。再び使う際に水を足してそのまま使えます。
ペットボトルを放置したことがある方はご存知かと思いますが、水分を入れた状態で放置すると中の圧力が上がり、開けた際にちょっとした惨事が起きる場合があります。瓶でも圧力は上がりますが、そうした惨事が起きません。何せ発酵食品を夏場に放置しても爆発しないように容器が丈夫かつ密閉性が高く作られてまので。夜中にポン!と鳴って驚くこともありません。(笑) この蓋がまた優秀なんですよ。この系統の瓶には他にも便利な使い方があります。おいおいご紹介いたしましょう。
皆様にとって楽しい書ライフを!!(・∀・)