手本を用意する

「書いてみる」の段階を過ぎ、続けたいと思う方の人の方向性として
二つの方向性が思い当たります。

一つは、飽きもせず書き続け益々楽しくなってくるでしょうか。
もう一つは、興味はあるが手本や深さが欲しくなるでしょうか。

例えば手本が欲しくなったり、
何か下支えが欲しくなったり、
自分の書(syo)に物足りなさを感じたら手本を用意しまよう。
手本は書道塾に属さなくても本屋さんにあります。

二玄社が出版している「中国法書選」に代表される出版物です。

まずは基礎知識なく視覚的な好みで選ぶのも
一つの方法かもしれません。

(備考)
視覚的な好みはある種の弊害もうみます。
それは別な記事で書きたいと思います。

書いてみる

準備が全て整ったら書いてみましょう。

まずは筆に対して馴染むことが先決となります。
筆の握った感触、
筆先を感じながら墨が紙を上を滑る感じを味わいます。

小学2年生程度までであれば、
まずは適当に筆をはしらせるだけで構わないでしょう。
5分もすれば飽いてきますので終了です。
芸事において、飽きは終了をいみするでしょう。
強制は百害あって一利なしです。素直にやめましょう。

小学3年生以上あたりから
好きな文字をとりあえず書くのがいいでしょう。
”とりあえず”ですのであまり気にする必要はありません。

いずれの場合も注意する点は、
「汚れる」ということです。
子供は派手に、大人でもそれなりに汚れます。
ですので、汚れてもいい格好でやりましょう。
汚れるのを気にしていては到底楽しむことは叶いません。
周囲に新聞紙を引いておくのも方法です。
筆の扱いに慣れていないので汚れるのは当然のことです。

(備考)気に入ったものができたら表具をしてみるのも考えです。

表具は高いと思われがちですが、
半紙程度の紙表紙であれば1000円程度から表具することは可能です。
記念にとっておくのもアリだと思います。
表具が仕上がったら、思いの外に感動すると思われます。

欧米人に比べ日本人は完璧主義傾向にあると聞きます。
楽しむことが下手だとも言われているようです。
確かにそうかもしれません。
何事も最初は下手で当たりまえなので、
下手なのを楽しむぐらいが丁度よいのかもしれません。
逆に上手になってくると上手さに苦しむことになりがちです。

何はともあれ楽しむことこそが全て原点のように思います。
続けていれば誰だって上手にはなるものです。
上手になることは結果であって目的ではないように感じます。

半紙(hansi)を用意する

筆(fude)、
墨汁(boku-zyuu)、
の用意ができたら半紙(hansi)を用意します。

半紙には表と裏があります。
購入した際に上になっている側が「表」になります。
具体的には、
指で触った時に、一方よりツルツルする側が表です。

下敷きをしき、
半紙の表側を上にして、
その上部角を文鎮でおさえます。
これで書くための準備は完成です。

蛇足ですが、
基本的に紙には表と裏があるようです。
普段みなれた上質紙、コピー用紙にも表と裏があります。
意識しませんけどね。

墨汁をいれる

筆を握ってみて感触を味わったら書く用意をします。

「墨汁をいれる」

100円程度から墨汁は売っています。
そういったもので構いません。

1.硯(suzuri)に墨汁を入れる。
2.水で薄めます。

目安がわからないのであれば、
墨汁30cc
水20cc
といった具合でどうでしょうか。

これは目安というわけではありません。
特に重要ではないということです。

たっぷり入れてしまうと
書き切るのは大変です。
最初は少しで構わないのです。
面倒であれば、
据え置き型の墨汁に直接筆を入れても構わないでしょう。

初めて、筆を握る

筆の糊が十分にとれたら、
糊のとけた水等を排水して筆を軽く絞ります。

中には、グイグイと絞るかたもいらっしゃるようですが、
毛を痛めてしまうのでやめましょう。
自分の髪の毛をシャンプーして脱水するようなイメージです。
化繊以外は動物の毛なので筆は生きてるといえます。

準備が整ったら次の段階は

「筆を握る」

にすすみます。
意外に多いのが「持ち方がわからない」という質問です。
これは写真がないとわかりづらいので後日写真を御覧ください。

筆の持ち方に関しては色々な方法論があります。

書道会に属している場合、
もしくは学校の授業で教えられた型がある場合は、
それを元にして構わないと思います。
それはあくまで一つの型ですので、間違いでも正解でもないと言えます。

筆を握ることが完全に初めてであれば、
まずは何も考えずに筆を握って下さい。
特に小さいお子さんの場合は、とりあえず握って筆で書くことに馴染むことが先決です。
最初に「ああしなさい」「こうしなさい」と決め付けてしまうと、
筆に対する姿勢が観念的になってしまい自在さが失われてしまいます。
まずは書いてみることです。

墨のついた筆の感覚。
実際に書かれた紙の上の何か。
その感覚を確かめ、
味わうことが始まりだと考えます。

大人の場合は、
これだといきなり飽きてしまうので辞書を片手に好きな字を書くのもいいように思います。
まずは筆と墨、そして紙との関係を楽しむのにとどめます。
気に入ったら表具してしまうのも手です。

まずは、思い思いに筆を握ってみましょう。

筆をおろす

道具が揃ったらまず初めにすること、
「筆をおろす」ことです。

方法:ためた水につけて、筆が完全にひらくまでしばらく放置して下さい。

これを行う意味は、
買ったばかりの筆をつかえる状態にするためです。

筆は購入時にカッチカチだと思います。
それは毛が傷まないよう糊で固められているためです。
鮮度の高い状態で保存しておく意図もあると思います。
糊で固められたままの筆は単なる置物のようなものですので、糊をとりましょう。

キャップをとります。
水につけます。

書道をはじめられた方によくある質問として、
「どの程度とかせばいいのですか?」というのがよくあります。
私も小2の時、最初に疑問に思ったことです。

全てとかしましょう。
(小学生以下は半分程度で構いませんが、中学生以上は全部がおすすめです)

先に書いたように、糊は筆を固定しておくためのものです。
書く際には不要なばかりか、半分だけとかして、半分は糊のままにしておくと、
毛がいたむばかりか、筆がいかされません。
また、しばらく使った後で溶かすことはできないでしょう。
糊に含んだ墨が完全に筆を固めてしまい糊がとけなくなるためです。
仮にとけたとしても、筆が痛んでしまい柔軟性を失っています。

半分とかすならいっそ短鋒という穂先(毛先)の短い筆を買ったほうがいいかもしれません。
穂先の短い筆を短鋒(たんぽう)といいます。
ただし、短鋒の筆になれると中鋒の筆を使うのが困難に感じるでしょう。
腕がたつほどに穂先が長いものが扱えるようになります。LvUPといったところでしょうか。
短鋒の逆は長峰(ちょうほう)といい、穂先(毛の部分)が長くなります。
ただ、書道はあくまで作品が全てなので必ずしも長いのが扱えるから凄いとは限らないともいえます。

先を見据えれば、「全てとかす」というのが最も無難に思います。
(小学生以下以外)

「水にどれくらいつけるの?」

「何分ぐらい水につけておけばいいのですか?」と聞く方もおります。
「筆が開いて、触った感じ柔らかくなるまで」です。
「それは何分ですか?」と食い下がったりします。
自分の「こんなもんかなー」でいいでしょう。
「水につけすぎて失敗した!!」なんてことは聞いたことがありません。
(ま、実際はつけすぎはいけませんが、それは余程です)
素で1週間とか稀にいるようですが、やめて下さい。
いい時期は筆がおしえてくれます。

穂先が開いています。

ちなみに、

筆は水につけたままおくのがベストです。
途中でユラユラ揺すったり、指で揉まないほうがいいです。
ただし、それはあくまで数万円以上する筆の話と考えて構わないでしょう。
数千円やましてや1000円の筆の場合は構わないと思います。
私だったら、ガシガシやってしまうでしょう。

ほとんど糊がとけると完全に開きます。
手で触ってみましょう。

ちっちゃいことは気にしないってところでしょうか。

(筆おろしにまつわる思い出)

ちなみに私は学校で「半分だけとかしなさい」と言われました。
半分だけとかすと書くのは確かに楽になります。
特に小学生以下は体の制御が充分に行えないため半分が無難かもしれません。

しかし、いずれは全部とかす時期が来ます。
すると「げ!全然違う!」とギョっとした記憶があります。
しばらくの間なれることがなく、また半分とかした筆を買おうかと思ったほどです。
中学生以上から初めるのであれば
全部とかしていればそれが当たり前になるので慣れるのもはやいです。

うまく書けないから嫌だと思うかもしれません。
安心して下さい。
半分しかとかさなくても、上手くはかけてませんから。
誰だってそんなものです。

書道(syo-do)に必要な道具

必ず聞かれるのが道具である。
書道をやるのに必要な道具を書きたいと思う。

1.筆(1000円程度、もっと安くてもいい)
2.墨汁(1000円程度、もっと安くてもいい)
3.書道用の下敷き(300円ぐらいだろうか。100円でもあったと思う)
4.硯(もしくは、なんらかの墨うけのための器)
5.紙(極端な話、白ければ上質紙でもやれなくはない)

以上かな。

1.筆について
 よく幾らの筆がいいのか聞かれるが、1000円ぐらいので構わない。
 下手なうちは良い筆をもったところで潰すだけである。
 しかし、道具からこだわりたい人はこだわってもいいと思う。ただ、何の影響もない。完全な自己満足に過ぎないだろう。
 安い最近の筆は化繊のものが主流のようだが、一向に支障はない。

 中には、「なんでもいいのであれば、絵筆でもよいのか?」と聞かれることもある。
 絵筆はやめよう。あれは別ものである。その字のごとく「絵」のための「筆」である。
 書がしぬだけであるし、まともな筆でちゃんと書けなくなる可能性も否定できない。
 そもそも筆鋒がいきない。

 行き過ぎればパフォーマンスのみとなり書の伝統や原型をとどめない。
 伝統を基板としてこその「書」「道」なのだと考えている。
 単なるパフォーマンスに伝統はなく、一世代のけったいな行動だけで終える。
 パフォーマンスでいきたいのであれば他の方法があると思う。

2.墨汁(ぼくじゅう)
 別に100円の墨でも構わない。
 単に私はそのランクの墨を使っているだけだ。
 練習用には構わないが、古いのはやめよう。
 墨は経年劣化する。

3.書道用の下敷き
 これは汚さないために必要だ。
 新聞をひいて書いたとしたら、1回でべっとりとしてしまうだろう。
 汚れないという点で優れいている。

4.硯(すずり)に相当するもの
 硯は極端な話、器であればなんでもいい。墨汁と水をいれるための器だ。

 あとは趣味の世界だと私は思う。
 硯の役目とは、本来は墨をすり、ためるためのものであったが、
 墨汁が進化した今、墨をする行為は特に意味はない。
 野尻氏に言わせれば「墨をする時間があるなら1枚でも書くことに費やすべし」である。

 墨をする時間が気持ちいい。
 そういう方もいらっしゃるであろう。そういう方は墨をすっても構わないと思う。ただ、相当な量が必要となるだろう。よってかなりの時間を注ぐことになるであろう。墨をすっている時間は書とは関係のない時間とも思える。

 墨色がどうのと言われることも多いが、それは多くの場合はそれ以前の問題のように思う。
 師の傍にいると「墨色が素晴らしい。どのような墨をお使いですか?」と言う声を耳にする。
 師は「企業秘密です」と言って笑ってみせるが、ごく当たり前の墨汁で書いているのを目の当たりにしている。

 脱線するが、これは意地悪ではない。
 以前は正直に言っていたのだが、きく側が「そんな筈はない」と聞く耳をもたないことがほとんどであった。
 師もいささか面倒になり現在に至った。
 そうした場合に師はニヤリと笑みをつくり、あとで(腕がよければ色もよく見える)と一人ごつる。

 墨色を気にする前に、字形やその他気に止めるべき部分が多すぎる。
 墨の色はその世界を脱した人が考えた方る次元なのだろうと思う。字がまずければ何も語るものはない。

 よって使わなくなった茶碗でも構わない。

5.紙
 これは書道店で最も無難な高からず安からずの紙が個人的におすすめだ。
 んー・・・今度、具体的に値段を調べておきます。

 多くの人はそれ以前の問題である場合がほとんどなので、なんでもいいと言いたいが、
(実際、私の師匠は「紙は白ければいい」と常日頃から言っている)
 安すぎる紙でみれる字を書くのは想定外に大変である。経験済である。

 昔、安すぎる紙を大量に買ったことがある。
 家にかえって筆をいれびっくりである。
 「ちょwwww これ無理wwwww」と一人で笑った。
 ただ、これは一重に腕のなさである。事実、わが師はサラサラっと書いて。
 「この紙はひどいねぇ(笑)」と笑っていたが、到底そうは思えない字がそこに踊っていた。
 (腕だなぁ)と自らの腕のなさを落胆したものである。
 1000枚で・・・1000円しなかった。
 1000枚で1500円クラスになると、途端によくなる。
 
 かといって、
 それほど紙にこだわる必要はないだろう。
 多くの場合、繰り返すようだがそれ以前の問題である。
 目的は書くことであってコレクションではない。
 書がひどければ以上である。
 道具で満足して筆をとらない例は枚挙にいとまがない。
 それはコレクターであり、書をやっているとは言えないように思う。

最後に道具ではないのでリストしなかったが、
・場所

いつでも硯をおき、下敷きがひかれ、筆がのっている。そういう場所を確保することは大切である。
藝術に限らず、「やりたい!」というその瞬間がもっとも大切である。
多くの場合、
用意しているうちに気がそがれ意欲を失ってしまう。
私のように気が多い人間にいたっては、光の速さのごとく興が削がれる。(笑)
場所という環境は書に限らず何かをするには非常に重要な要素となるだろう。
場所が用意できない人は、小学生時代に誰しもが買った「書道道具セット」はありかもしれない。
内容もあれで十分である。最小限の時間で道具が一式かける準備にいたる。