道具の誤解

書道あるあるに該当する内容です。
長いこと気にも止めていませんでした。
よくあると聞きます。

例えば、ある先生が「あ」という筆をもっていた。
「欲しいなぁ」
と馴染みのお店に行き、

「”あ”という筆ありませんか?」
と尋ねます。すると店員は
「は?」
といった、困った顔をしてます。
これは買う側が前提条件を知らないことでしばしば発生することです。

書道用具は実は卸先店舗で名前が変わります。中身は同じです。
”A”という店舗では”あ”という筆が、”B”という店舗では”い”に変わっています。
なので当然お店のスタッフは「ありません」となります。
筆にかぎらず、紙等も卸先によって名前が変わります。

なので、

・どの店で、
・なんという商品名の
・なんなのか

この3点は最低限おさえる必要があるでしょう。
間違わない為に、価格も知っておいたらベストですね。
尚、その情報をもって馴染みの店に行っても無駄です。
該当するお店に行きましょう。
何故なら、どの店の何が自分の商品に該当するかお店の方はご存じないからです。

ちなみに私は、
上野駅にある劫榮麓(こうえいろく)を馴染みにしております。
送料はかかりますが発送にも対応してくれ、
紙は重いので発送で、筆類は直接買いに伺います。
大至急の際は、新宿の某店で買いますが・・社長すんませんw

書道展の表具もここにお願いしております。
毎回、書道展のチラシやポストカード、ポスター等を置かせてもらっております。
だいたい開催一ヶ月前にお伺いし、置いていきます。
今まさに置いてあると思いますよ。
このお店には可愛い店員さんもいます。いや、ほんと。

筆をおろす2

「筆をおろす」という記事のアクセスが非常に多いので、
私のやり方を書いておきます。

筆は購入時、糊で固められております。
それを溶かすのが「筆おろし」ということです。
糊で固めるのは、保存、毛を痛めない、筆をまとめる等、実用的な意味があります。
当然使う際には必要がないので溶かす必要が出てきます。

1.500ccのペットボトルを用意する。

2.毛先がうまる程度の水を入れる。

 
今回使う筆は
上野駅にある劫榮麓製
10,500円のミンク筆
私が普段使っている筆です。
3.筆のキャップをとります。
 筆のキャップを大事にとっておく方もおりますが。以後使いません。
 水に溶かした筆をキャップを入れるのは百害あって一利なし。
 捨ててしまって構いません。
 持ち歩きたい方は、「筆巻き」を買いましょう。
4.ペットボトルの口にセロテープで筆を仮固定します。
  入念にやる必要はありません。
5.24時間つけおき、ペットボトルを数回振ってから水を捨てます。
6.また水を入れ、同じように固定します。
7.ペットボトルを数回振り、また24時間放置します。
8.ペットボトルを数回振り、水を捨てます。
これで毛先や筆を痛めず、
横着も出来て、
綺麗に糊をとることが出来るでしょう。

 2度やるのは糊を完全にとるためですが、
面倒な方は1度目の水を捨てた後、新しい水の中で筆を泳がせて使っても構わないでしょう。

固まった筆の再生

筆は横着するといとも簡単に根本から固まっていきます。
夏場などは3日、p書かないと根本からカビます。

筆はある程度の期間ごとに洗っていないと根本から徐々に固まっていきます。
さりとてマメに洗うと毛が痛みます。
毎日書いている場合は3日に1度ほど筆の根本に水をかけ、筆たてに置いておくだけで平気です。

怠ってしまい鍾乳石のごとき根本から固まっていき、
気づけば半分も固まっていた。なんてことはありませんか?
一度固まってしまうと、水やお湯でも溶けない。それが墨です。
ガシガシやると毛が駄目になるだけです。

恥ずかしながら、私も過去によくそうしたことがありました。

「筆をダメにした」と捨てるのはまだ早い。


筆は1週間から10日ほど水につけることで再生させます。

単純に1週間も容器に入れっぱなしにすると、筆先が変形し癖がついててしまうので一工夫をします。
(方法)

・500ccのペットボトルを用意します。
・筆先が完全につかる程度の水を入れます。入れすぎはいけません。
・筆をペットボトルの口にセロテープで仮固定します。入念にやる必要はありません。
・1日に1から3回程度ペットボトルを横に数回振ります。
・水は毎日入れ替えます。
・1週間から10日待ちます。

これだけです。
カチカチに固まっていた墨が徐々にはげおち、水にも溶けていきます。
根本まで綺麗に復活。

こんな感じにつります。
(写真の筆は新品です)

ほぼ根本まで墨が溶けました。
この筆は5割ほど完全に固まっておりました。

(ご注意)

指でもむのは止めましょう。
毛が痛みますし、
毛のまとまりが崩れてしまいます。

筆たて(fude-tate)

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・筆たて
(ふでたて)
(fude-tate)
用途:筆を立てて置くための容器。
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書道(syo-do)に必ずしも必須とは言えない道具に分類されると思います。

特徴:
価格が安価で極めて実用的。
ある程度かくのであれば欲しい。文房具屋にも売っている。
筆おきとの違いは、
筆おきが一時的に横へおくためのもの道具だが、
筆たては、置いている時間が結果的にながい。
また、筆おきの装飾性に比べると、
筆たては実用的なものしか見かけない為、
コレクション性はない。
比較的近代に出来た道具ではなかろうか。

備考:
非常に重宝する道具で、
そこそこ書く人は筆を乾かなさい為に必須となる。
筆は毎回洗ったほうがいいと言うが、
頻繁に洗うのは毛にダメージとなる上、いちいち手間である。
墨がついた状態で筆たてに置くのが実用的。
しかし、長期間使わない場合はやはり洗ったほうがいい。

筆おき(fude-oki)

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・筆おき
筆置
(ふでおき)
(fude-oki)
用途:筆を置くための道具。
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書道(syo-do)に必ずしも必須とは言えない道具に分類されると思います。

特徴:
価格が非常に安いものから高いものまで豊富にある。
日本の旅先でも目にすることが少なくはない。
文鎮のように重量バランスや大きさといった気にかける要素もないため、
デザイン、材質なども多種多様でコレクション性が高い。

備考:
筆おき、筆たてを使わない場合、
多くは硯(すずり)の縁に筆をたてかけておくことが多い。
しかし、
筆が転がってしまい「作品が!!」なんて経験者は少なくないだろう。
筆が置きやすいように縁が凹んでいる硯(すずり)もある。

水さし(mizu-sasi)

これは書道(syo-do)に特に必要じゃない道具に分類されると思う。
必ずしも必須ではない道具という意味です。
代用がきくものは一杯ありそうです。
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・水さし
水差/水指
(みずさし)
(mizu-sasi)
(米:pitcher/英:jug)
用途:水を入れておく器。
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アメリカ英語でピッチャー言われると、
野球かビアガーデンしか思い当たりません。
その辺はなんとな~く斟酌をもって受け止めてください。

そのままの意味で水をいれておく器です。
専用のものもありますが、
茶道と異なり、書道は結果(作品)がものをいう世界なので
気にならなければなんでも構いません。
私は、格下げになった急須や、
甥子が旅行へいった際に作った陶磁器のお椀に入れています。

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水を入れる理由
1.墨色(boku-syoku)
2.滲み(nizimi)
3.掠れ(kasure)
4.粘度(nen-do)
これらを調整するため。
墨をすりたい場合は必ず必要です。
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1.墨色は基本的に黒ければいいのですが、
行書や草書は濃淡が鑑賞の大きな要素になってきます。
当分の間はあまり気にしない方がよいでしょう。
他に気にしなければいけないことが山積みだからです。

日本人は薄いのが好きな方は多いようですが、
薄すぎる作品もよく見かけます。
場合によっては読めません。
薄い作品は筆路不明瞭になるので減点の対象となります。
薄さにかまけて誤魔化していることも少なくないかと思います。
薄さに酔いしれた草書は危険です。
その甘美さに技術が蔑ろにされてしまうでしょう。
いずれ書道から徐々に遠ざかった世界に入ってしまうと思います。

2.「滲み(にじみ/nizimi)」は鑑賞の重要な要因となります。
滲み調整で水を入れることことも少なくないでしょう。
しかし、あまり意図しない方がよいでしょう。
滲みは結果的に出るものです。水分を含みますから。

滲みを過度に気にすると、書の道から外れて迷子になってしまうかもしれません。
作為的になってしまいます。
それは「わざとらしさ」につながる為です。
師はよく、「鼻につく」といいます。

ドヤ顔のようなものです。
うっかり出てしまったドヤ顔は表現ですが、
意図して用意していたドヤ顔は感じ悪いだけなのと同じことのように思います。

3.掠れ(かすれ/kasure)」は行書や草書にとって重要な鑑賞要素となります。
2に同じで結果的にでるものです。
水分が足りなくなれば、結果的に筆は掠れます。
よって再び筆を墨につけます。

最初のうちは誰しも掠れを嫌う傾向になります。
掠れないように墨をやたらつけるでしょう。
それで構わないと思います。
掠れを気にする以前の問題だからです。

掠れは難しいです。
わざと掠れれば、滲みと同じで鑑賞を阻害させます。
しかし、1行目と2行目が同じ位置で同じように掠れていると、
仮に書いた本人は意図していなかったとしても、作為的に感じてしまいます。
自然観が損なわれてしまうのです。
そこは意図的に位置を外します。
その意図が見透かされると鼻につくでしょう。
なので気にしないで意図する必要が出てきます。
いずれにせよ先の話です。

4.粘度、粘土ではありません。
ネットリ感ですね。
血液と同じで、サラサラしていると筆がはしります。
はしるとは、スムースに筆が動くということです。
粘度が上がると筆に抵抗を感じます。
草書の際は抵抗感は特に気になります。
主にサボったリングが出た時に気になります。
最初はそれどころではないので気にする必要はないでしょう。

(私にしか適用されない用語)

※格下げになった急須
夏場にお茶をいれたまま放置してしまいカビが盛大に繁殖。
洗った後もお茶を飲むには躊躇われた急須。680円で購入。

※サボったリング:
硯に墨をいれたまましばく放置していたため、
水分が蒸発し水位が下がった際にできる。
毎日、もしくは定期的に書いていればこんなことは起きない。
怠け者の証。(笑)

文鎮(bun-chin)

これは書道(syo-do)に特に必要じゃない道具に分類されると思う。
必ずしも必須ではない道具という意味です。
代用がきくものは一杯ありそうです。
重くて邪魔にならなければいいので。

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・文鎮(ぶんちん)(bun-chin)(paperweight)
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英語に訳すと paperweight となるようだ。
用途は紙を固定する重しである。

なので、紙が動かなければ必要がないし、極端な話なんでもいい。
私は滅多に使わない。基本は夏場だけであるが、
端っこがカールしている場合に、筆置でおさえることは多々ある。

いかにも文鎮でござい、という見慣れた銀の鉄棒である必要はない。
アレのいいところは
1.邪魔になりにくい。
2.汚れが落ちやすい。
という点で優れている。
また、突然の襲撃の際、十手もどきとして戦えるかもしれない。
あれが私の足に落ちたことがあるが、
「オーーーマイゴット!!」と咆哮したことがある。
なかなかの破壊力である。

基本重ければいいので、装飾的な文鎮もよく見かける。
コレクターはいると思うし、その気持もわかる。
美しい装飾をされた文鎮は見ごたえがある。

私は300円の文鎮を20年以上使っている。
邪魔にならなければ自重のある台座つきフィギュアや、小さな熊の置物でも構わないわけだ。